フィールドレコーディングの機材 part2                       初稿 2006.10.1 最終更新 2015.11.22

 



フィールドレコーディングを気軽に楽しむ場合、マイクや録音機はできるだけ小型・軽量の方が良いと思います。
しかし、よりクオリティの高い録音が求められる場合、選択肢の多いファンタム電源駆動のコンデンサーマイクを使うことがあります。
今回は、ファンタム電源が必要なコンデンサーマイクを使うポータブルな録音環境について考えてみます。




マイクロフォン 

ファンタム電源が必要なコンデンサーマイクというとその種類は膨大になります。
海外の掲示板での評判なども参考にして、フィールド録音向きと思われるマイクをピックアップしました。


SHURE MX183    無指向性  SN比  72dB 感度-27.5dB  Ø12×22mm・136g  (カプセル交換で単一指向性にも対応。最大SPLが117dBとやや低い。小型なのでバイノーラル録音も可。WL183はプラグインパワーに対応。)   

Audio Technica AT4022    無指向性  SN比 78dB以上 感度 -34dB  Ø21×144mm・124g  (AT3032の後継機種。音質はSchoepsのMK2とも比べられ、SN比は実測で86dB!という非常に高い評価も。ただし最近製造されたモデルは湿度に弱いという情報も。)   
                 
Rode NT55        無・単    SN比  79dB     感度 -38dB   Ø20×145mm・110g  (単一指向性と無指向性のマイクカプセルが付属。良さそうな雰囲気。マッチドペアでも販売されています。)    

Oktava MC-012 無・単     SN比  76dB    (NT55にしてもそうだがカプセル交換で指向性が替えられるマイクはお買い得。海外ではMK-012。)
 
MBHO MBP-604+KA100LK  無指向性  SN比  80dB以上  (プリアンプ部とマイクカプセル部がセパレート。一体型のマイクもある。無指向性ならこの組み合わせがよさそう。)

Sennheiser MKH20  無指向性  SN比  84dB      ( プロ御用達のMKHシリーズ。MKH416などのガンマイクが有名だが、これは無指向性マイク。MKH 800は本体で5つの指向性を切り替えることができる。

SANKEN CO-100K   無指向性  SN比  72dB以上 感度-28dB Ø21×192mm・150g (100kHz までの帯域をカバーし、音楽録音にも使える唯一のマイク。ハイサンプリングレートでの録音、超高周波音の解析などにも使える。)

Sanken CUW-180 単一指向性  SN比 77dB  感度 -31dB  Ø21×79×161mm・224g (2つの可動型XYステレオマイクを搭載。CS-1などのセンターマイクと組み合わせることで高品位なサラウンド録音が可能。)             

NEUMANN KU100     無指向性  SN比  78dB    (ノイマンの最高峰ダミーヘッドマイク。SENNHEISERのMKE 2002に比べるとかなり重い。バイノーラル録音専用。)

Sennheiser MKH8020  無指向性 SN比 不明  Ø19×41mm・55g  (SN比に大変優れ、湿度にも強い小型軽量マイクの最高峰。周波数特性も10Hz~60,000Hzと広帯域。) 

Sennheiser MKH8040   単一指向性 SN比 不明  Ø19×41mm・55g  (MKH8020の単一指向性バージョン。超単一指向性のMKH8050、超指向性のMKH8060もある。)

(参考) DPA 4060    無指向性  SN比 71dB   (超小型マイクなので取り回しが非常に楽。湿度にも強い。SN比はそれほど良くはないが、多くの場合問題ないレベル。) 



注1)無指向性マイクでのステレオ録音は理想的には位相特性の揃ったマッチドペア(EarthworksのQTCシリーズなど)を使うのが望ましいらしいのですが、2本のマイク感度に大きな差がなければ問題ないでしょう。またここでは取り上げていませんが、インタビューや鳥の声など特定方向の音をピンポイントで録りたい時にはガンマイクあるいはパラボラマイクのような指向性の鋭いマイクの方が適しています。RODE NT2-AはSN比が87dB と大変良く、指向性も本体で切り替えられて、比較的安価なのも魅力的ですが、重量が重過ぎるので外しました。またSchoepsのマイク(MK2など)は音は最高だが、湿気にかなり弱い(ノイズが発生する場合がある)そうです。湿度の高い場所での録音には向かないマイクも多いので注意が必要です 。またコンデンサーマイクは野外で使用するとき、多くの場合、風防を使う必要があるでしょう。マイク付属のウインドスクリーン(スポンジ素材)はそよ風程度には対応できますが、ある程度強い風には、ふさふさのファーがついたウインドジャマーと呼ばれる風防(さらに強い風にはかご型のウインドシールドとの組み合わせ)がいるでしょう。ウインドジャマーは Rycote社製のものを購入すれば間違いないです。 

注2)マイクのノイズの大きさはSN比の他に感度(出力の大きさ)も関係しているので一概には言えませんが、SN比が高いものほどノイズの少ないマイクです。最近は安価なコンデンサーマイクもSN比が良いものが多いようです。野外でファンタム型コンデンサーマイクを使って録音する場合、取り扱いに気を遣う(重い、湿気に弱い、壊れやすい、風に吹かれやすい)、セッティングに時間がかかる、マイクケーブルやマイクスタンドなどの荷物が増える、録音機も大きく重くなる、録音の際人目を引く、などマイナス点が多々あります。どうせ使うなら良い音(目的の音)が録れるマイクを使うべきです。SP-TFB-2などの安価な超小型マイク(ラベリアマイク)でも耐入力さえ気をつければまともな音で録れるし、DPA4060なら並のファンタム型コンデンサーマイクより良い可能性があります。 



ワンポイントステレオマイク  

RODE NT4                             単一指向性(XY) ファンタム/電池駆動  SN比 78 dB 
audio-technica AT9940        単一指向性(XY)   プラグインパワー/電池駆動  SN比 70 dB
audio-technica BP4025        単一指向性(XY)   ファンタム電源 SN比 80dB以上 
Shure VP88              単一指向性(MS)  ファンタム/電池駆動 SN比 70 dB


注)ワンポイントステレオマイクはカプセルが固定されているため、セッティングの自由度という点で上記のマイクに劣ります。
しかしセッティングにあまり時間をかけられない場合や手持ちで録音したい場合、近接した音源をピンポイントで録音したいというような時は良いかもしれません。またBP4025以外は電池駆動が可能なので、ファンタム電源が供給できない小型のICレコーダーでも使用できるのはメリットです。




録音機(ポータブル・レコーダー)

ファンタム48Vを供給できるポータブルレコーダーは、各社から発売されています。
記録メディアにコンパクトフラッシュやSDカードを使ったもの、フラッシュメモリーやハードディスクを搭載したものまで色々です。
機能、可搬性、予算などを考慮し、用途に適したものを選ぶ必要があります。 
(追記)2015年11月現在、EDIROL、FOSTEX、MARANTZなどの多くのレコーダーが生産終了になっています。 


TASCAM DR-100MKII

24bit/96kHz対応のポータブルレコーダー。堅牢なアルミニウム製で、ロック付きのXLR入力が2つ、左右TA独立のロータリーボリューム。
デジタル入力があるのは珍しい。ステレオミニ(プラグインパワー)のマイク入力は省略されている。単三電池2本なので、ファンタムマイクをペアで使用すると実使用時間は短そう。
長く販売されているのでそこそこ売れているのだろう。値段も比較的安いので、とりあえず初めの一台としてはいいのでは。 

TASCAM DR-70D 

4つのXLR入力を備えた小型軽量のレコーダー。一眼レフやビデオカメラの撮影時に使うのが主な用途のようだが、単体の音声レコーダー
としてもなかなか使える。まずノイズの少ないマイクアンプがついている。そして作りもそれほどチープな感じではない。ただ使ってみると色々と
粗が見えてくる。まず小型化のせいもあり、入力レベルのトリムや再生・停止ボタンがとても小さく、操作しずらい。またメニューの内容が非常に分かり
づらい。ファンタム電源のスイッチは外に付けてほしかった。また電池はあまりもたない(ファンタムマイク2本の場合、eneloop pro で3時間もてばいい方、仕様の8時間45分は明らかにおかしい)。
24bit/96kHzまでの対応、ヘッドホン出力の音が貧弱なのは残念。とはいえ3万円前後の値段で買えることを考えると十分お買い得と言える。 

TASCAM DR-701D   

DR-70Dの上位版のよう。カメラとの同期機能などのほか、192kHz録音に対応し、マイクアンプとヘッドホン出力がグレードアップされたのは良い。
ただメニューは相変わらずのようだし、ボタン類が極小なのも同様。またDR-70D同様、バッテリーはあまり持たなそう(仕様の駆動時間は大幅に下方修正されている)
ただDR-70Dの2倍以上の価格は微妙なところ。

TASCAM DR-680MKII  

6つのXLR入力とデジタル入力を備えた24/192対応のレコーダー。上記の機種に比べるとだいぶ大きく重くなるが、逆にこれぐらいの方がマイクを接続したときの安定感はあるだろう。
とりたてて特徴はないが、録音ボタンが大きく、ファンタムやゲインの切り替えなどもスイッチがあるので(前面ではなく上部にあるのは気になるが)、使いやすそう。

ZOOM F8 

ZOOMから本格的な8chのポータブルレコーダーが発売された。ZOOMのレコーダーというとプラスチッキーで安い(割に音はいい)イメージだが、これはアルミ製のボディで、マイクプリなどもかなり高品位なもの
が装備されているよう。値段はかなり高いが、それでもsound devicesのレコーダーよりはだいぶ安く、コンパクトなので、もし同程度の録音性能ならお買い得だろう。 

SOUND DEVICES 7 series    

702、702T、722、744Tの4機種あり全て24bit/192kHzに対応し、SN比、ダイナミックレンジとも上記
の機種より上で、世界的に評価の高いレコーダーです。702は海外では2000ドル程度ですが、日本の代理店を
通した価格が35万円と非常に高価なのが難点です。
702、702T、722は2chのレコーダーで、744Tは4ch同時録音が可能です。722,744Tは40GBのHDが内
蔵されCFにも対応していますが、702、702TはCFのみの対応です。そのため702、702Tは953g (バッテ
リー込み)ととても軽量です(722は1.15kg、744Tは1.25kg)。最上位機種の744Tでも大き目の弁当箱位?と
かなりコンパクトです。全機種バッテリーにsonyのインフォリチウムバッテリー が使えます。 

外形寸法  209 (W)×45 (H)×125(D) mm 
http://www.gentrade.co.jp/Sounddevices/7_Series_Recorders.html
http://www.gentrade.co.jp/Sounddevices/7_Series_Comparison.html  


SONOSAX MINIR82(MINIR2) 
               
スイスのプロ用音響機器メーカーsonosaxからレコーダーが発売されました。24bit/192kHzで録音可能、HDを搭載、CF
にも対応。MINIR82は2chのマイク(ライン)入力以外にもAES/EBUで4系統で8chのレコーディング が可能、MINIR2は2ch録音
のみでCFのみの対応だったと思います。 MINIR82は日本でもようやく出荷開始になったようです(MINIR2はまだ?)。
寸法:120×80×28mm、 重量 430g(バッテリー含む)は機能を考えると驚異的な小ささです。PYRAMIX native というソフトウェア
が付属するようです。 

http://www.gentrade.co.jp/Sonosax/SONOSAX_MINIR82.htm 
http://www.sonosax.com/MINIR82/UM_EN_A4.pdf(英語マニュアル) 


  
生産完了機種については こちら



その他の録音システム 


Core Sound PDAudio  

これは同社のMIC2496(ポータブルマイクプリアンプ+ADコンバーター)と PDAudio CF(PDAにデジタル入力を追加するカード)
を使用して、PDAを録音機として使用するシステムです。MIC2496は9Vバッテリーで駆動し、ファンタム48Vを供給できる小型マイクプリ 
で、さらに最大24bit/192kHz対応のADコンバーター 機能ももっています。他にも denecke AD-20などがmic2496の代わりに使えます
(ただし20bit/44.1kHzまでの対応)。利点は何といっても非常にポータブルなセッティングで、ハイビット、ハイサンプリングレートの録音
が行えることです。ただしオールインワンのレコーダーではないので、例えばMIC2496とPDAudio CFをつなぐデジタルケーブルを忘れ
たりすると録音できなくなります。またMIC2496のバッテリー、PDAのバッテリー両方に気を使う必要があります。                

HP iPAQ h2210/h2215+PDAudio-CF +Live2496(ソフトウェア)+Mic2496 で1000ドル弱という感じらしいです。
このほかに記録メディア(SD、CF、PCMCIAカードなど) を購入する必要があります。

http://www.core-sound.com/pdaudio_system/1.php 


バッテリー駆動できるファンタム電源+小型録音機

以前nature sound recordistsのメーリングリストで、ファンタムが必要なコンデンサマイクは、Rolls PB224、ART PHANTOMIIなど安
価なバッテリー駆動ファンタム電源 と民生用録音機のマイクイン(プラグインパワー)につなぐだけで使うことができ、特にsonyの
HI-MD録音機(MZ-NH1、MZ-RH1など)のマイクインを使った場合、ノイズの少なさは高価なレコーダーにも匹敵すると言う
情報が書かれていました。つまり高価なマイクプリアンプやレコーダーなど買わなくても、安価に高品質な録音ができてしまうというこ
とらしいです。Rolls PB224は見つかりませんでしたが、ART PHANTOMIIはサウンドハウスで6500円位で売っているようです。
Rob Danielson氏のHPで上記バッテリー駆動ファンタム電源+HI-MDとSOUND  DEVICES 722に同じマイクを接続して
ノイズを比較した音源があります。結果は驚くべきものになっています。他にも色々と興味深い音源がUPされています。
(実際の使用に関しては自己責任でお願いします。)
                          
Rob Danielson氏のaudio project garally http://www.uwm.edu/~type/audio-art-tech-gallery/
                                                    





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